MODEL PLAN

モデルプラン

玉野深山の家

第1回「瀬戸内国際建築デザイン実施コンペ2025」フリーランス部門 優秀賞

玉野深山の家

計画地である 22 号地は街区の最も奥まったところに位置し、南・東の 2 面が隣家に、北・西のもう 2 面が豊かな自然に面している。
性格の異なる周辺環境へ補助線を引くように、ちょうど区画の対角に斜めに走る基準線を据えた。

この住宅は、正方形平面の対角線上に大梁を 3 層積み重ね、各層で互い違いに床を張った構成となっている。
平面的には大梁を境に、一方が直角三角形の床、もう一方が同じ大きさの吹き抜けとなったスキップフロアの形式で、
大梁をくぐったり、跨いだりするようにして各層を行き来する。
外周部は間口いっぱいの開口が、こちらも各層で互い違いに配置されている。

大スパンが可能な J ブリッドフレーム(JBF)の特性を生かすべく、
矩形平面における最も長い距離=対角線上に最大スパン 10m の JBF の大梁を配置した(必然的に平面は 7m 角となる)。
この JBF 大梁に直交するように小梁が架け渡され、床面を構成している。
JBF の梁せいに対して床を張る位置は各層で異なり、大梁の側面に小梁を架けて床懐をつくったり、逆梁として床端部に立上りをつくったり、
それぞれ必要に応じた納まりとしている。
いずれの場合も JBF 軽量溝形鋼の片面のフランジに小梁や床合板を載せ、
反対面はスラブの小口としてそのまま現しとした即物的なディテールとなっている。
また、JBF の下面は建具の鴨居としたり、カーテンレールを埋め込んだりといった
二次的な役割も担わせており、構造部材でありながら親密さを感じる存在となるような現れとしている。

外周の開口部には BOX 型及び門型の J- 耐震開口フレーム(JF)を適宜配置している。
各辺中央の偏平通し柱は、JF の縦フレームが両側から抱き合わされて T字型の構造体となり、
オイルステイン拭き取り(木目残し)仕上を施して室内に現しとしている(納まり上、隅部のアラミド繊維シートは上下壁の仕上で隠される)。

この住宅で試みたのは、JF / JBF がつくる単純で大きな構成と、その立ち現れ方のデザインである。
室内におおらかに現れる構造体と、斜めの線が生むパースペクティブ、床・開口の断面方向のずれによって、
小さな平面の中にはさまざまな(物理的、心理的な)距離感のバリエーションが生まれ、ものや人の営み、外の世界が多様な関係を結び始める、そんな住宅を構想した。