ARCHITECT
プロ
木村 吉成
Yoshinari Kimura
木村松本建築設計事務所
空間に〈思考の輪郭〉を与える建築家、木村吉成。木村松本建築設計事務所を共同主宰する彼の設計思想は、ロジカルな構成を基盤としながらも、生命の揺らぎや暮らしの偶発性を受け止める柔軟さを内包しています。彼らが目指しているのは、単に住みやすさを追求する住宅ではありません。建築の架構(骨格・構造体)と、そこで営まれる生活とを分断せず、相互に作用し合うものとして再構築する試みです。
■ 「構造」と「生活」が混ざり合う境界線
木村松本の設計において特筆すべき点は、架構そのものが空間の表情となり、暮らしの動機へと直結していることです。柱や梁は単なる耐震要素としてではなく、空間の質を決定づける存在として位置付けられています。確かな架構は、住まい手自身が設えを考える上での手がかりとなり、豊かなシーンを与え、陰影を生み出します。また、住まい手はその存在を通して建築の成り立ちを身体的に理解し、その秩序の内側で、自らの自由な生き方を見出していきます。
■ 都市と対話し、余白を調律する
代表作『house S / shop B』をはじめとする作品群には、都市のノイズを遮断するのではなく、適切な距離を保ちながら風景と関係を結ぶ知的な操作が表れています。木村松本は、建築を完成した静止状態としては捉えていません。家族関係や周辺環境の変化、使われ方の更新といった「動き続ける条件」と架構とが交わるところに発見される余白こそが、未来へと開かれた暮らしの豊かさを育むと考えています。また架構のみならず、「なぜこの高さに窓があるのか」「なぜこの素材が選ばれたのか」といったその問いのすべてに、建築学的な論理と生活者としての実感が矛盾なく同居している点に、木村松本の説得力があります。
■ 教育者としての眼差し
大阪芸術大学建築学科准教授として教壇に立つ木村は、建築を単なる学問や技術として捉えていません。設計に必要な確かな技術を身につけることと同時に、建築が建てて終わる消費財ではなく、100年先の誰かに引き継がれうる存在であるという想像力を重視しています。歴史的背景や場所性を丁寧に読み解きながら、現代においてどのような「型」を示し、人と伴走していくのか。実践と教育の両側面から、建築を社会に開かれた豊かなプラットフォームとして位置付けています。
■ 住むほどに深まる〈知的な住空間〉
木村松本の建築に身を置く人々が感じるのは、「建築に導かれる」という新しい自由です。最初はストイックに映った空間が、住むほどに驚くほどの寛容さを見せていきます。建築が示す秩序は、日々の思考や行動を静かに整え、住まい手自身の選択を支えます。そして要望の先にある、まだ言葉になっていない理想をかたちにすること。自分らしい生き方を求める人にとって、彼らの建築は、その背中を静かに支える存在となるはずです。
受賞歴
木村松本のこれまでの歩みは、建築界における数々の主要な賞によって高く評価されています。
第27回 SDレビュー(2008)
第3回 JIA東海住宅建築賞 大賞(2015)
第12回 JIA関西建築家新人賞(2018)
第33回 新建築吉岡賞(2018)
第4回 藤井厚二賞(2019)
グッドデザイン賞ベスト100(2021)
第33回 JIA新人賞(2021)
第36回 福岡県美しいまちづくり建築賞 住宅の部 大賞(2023)
ほか多数受賞